◆第7回口頭弁論(2017年12月25日 東京地裁)
「原告の陳述書のネット掲載問題~裁判による二次被害~」
「全国部落調査」復刻版裁判の第7回口頭弁論が12月25日午前、東京地裁でおこなわれました。今回も100人を超える人が傍聴にかけつけ、抽選となりました。裁判の後は、弁護士会館で報告集会も開かれました。
今回の裁判では第6の準備書面と原告の第1次陳述書(9人分)が提出されました。
弁護団からは、
➀ネット社会における部落差別の現実、
➁原告の陳述書のネット掲載問題、
➂繰り返される被告Mの挑発行為とプライバシー侵害の問題など
について、口頭で説明がおこなわれました。
①ネット社会における部落差別の現実
弁護団からはネット上にあふれる差別情報の氾濫により、部落に対するデマや偏見、差別意識・忌避意識が「再生産」されている現実が指摘されました。(参考:シノドス「インターネットと部落差別の現実」川口泰司)
結婚差別や就職差別、土地差別など、身元調査はすべての部落差別の出発点で。それをネット上で可能にした鳥取ループ・示現舎の行為の差別性を弁護団は強く指摘しました。
また、今回の事件後、エゴサーチで親や自分が部落身出という立場を知り、動揺する当事者の現実なども語れました。(参考:「私たちの部落問題Vol.2」)
②原告の陳述書のネット掲載の問題
今回の裁判では第1次として原告9人の陳述書が提出されました。陳述書には、原告の名前や出身部落名、自身の生いたちや家族の被差別体験や被害状況など、極めてプライベートな内容が書かれています。
今後も原告200人以上の陳述書の提出が予定されています。
今後、被告Mらによって原告の名前や住所、出身部落名などのセンシティブ情報がネット公開されるとなれる恐れがあります。
ネット公開されるとなると、二次被害をおそれ、自身や家族の被差別経験や被害の事実などを書くことへの不安や躊躇する原告も出てきます。
そのため、弁護団から原告の陳述書をネット公開しないことを強く求めました。しかし、鳥取ループのM被告は、「掲載しない」とはハッキリと答えず、「聞いておく」と答えるのみでした。
◆「ネットの電話帳裁判」で被告Mに対して削除命令と賠償
2016年4月、「全国部落調査」復刻版の出版禁止の仮処分を求めた5人の原告の陳述書(氏名、出身地、年齢、経歴、部落差別体験等)が、現在も原告の承諾なく、ネット上に公開され続けています。
原告が個人情報も含まれる陳述書を「ネット上に掲載しないで欲しい」と求めているにも関わらず、それを無視し掲載すること自体が、原告を傷つけ、不安にさせ、二次被害を誘発させる行為です。
すでに、「ネットの電話帳」の裁判では被告Mに対して2017年11月、大阪高裁が原告の名前や住所・電話番号等の個人情報が掲載されている裁判資料のネット掲載は「違法」であるとの判決を下しています。
弁護団からは、大阪高裁の判決についても言及し、ネット掲載をしないで欲しいことと強く被告Mに要求しました。
◆繰り返される被告Mのプライバシー侵害と挑発行為
今回提出された準備書面では、被告Mが原告らの自宅に電話をかけたり、原告の親族宅や会社へ突然押しかけ、それらの行為をネット上で公開するなどのプライバシー侵害と挑発・攻撃行為を繰り返している点にもふれています(準備書面6、p14~)。
また、被告Mらがネット上でばらまいた「部落解放同盟関係人物一覧」の記事情報が利用され、解放同盟関係者に対してカッターナイフ・アイスピック・ナイスなどを同封し、悪質な差別文書を多数記載した「脅迫状」までが送付され、現実に傷害結果が生じている現実も報告されました。(準備書面6、p22)
③被告Mの反論 「同和対策事業が部落差別の原因」
被告Mからは、前回の原告の主張(準備書面5)に対して反論もありました。
Mは「『部落地名総鑑』が利用されて、差別がおきた事実なんかない!解放同盟の被害妄想だ!」「部落差別が残ったのは、同和対策事業をしたらからだ。同和対策事業を実施しなかった地域は、差別なんかなくなっている。実際に大阪市内にもそんな地域がある!」と、原告や傍聴席に向かって強い口調で言い放ちました。
差別と貧困の厳しい現実のなか、「地域をよくしたい」「子どもたちや孫たちのために」と解放運動をしてきた先輩たちの顔が浮かんできました。それを嘲笑うかのように、そのような解放運動や同和対策事業が「差別の原因」といい放つ被告M。彼の主張を聞きながら、私は怒りで肩が震えていました。
★素敵な「クリスマス」プレゼントもあったよ!
でもね。しんどいことばかりではありませんでした。
この間、ABDARCのイベントに参加してくれた東京のカウンターの人たちや作家の星野智幸さん(ブログ「鳥取ループ裁判にいってきた」掲載)なども駆けつけてくれていました。そのことが、すごく嬉しかったです。この裁判を通して、じわじわと、反差別の仲間も確実につながっています!
また、朝日新聞(12/22 大阪本社)の記事、朝日デジタル(12/30)でもABDARCの事を取り上げてくれました。
次回の裁判は3/12(月)14:00~、東京地裁103号法廷です。
ぜひ、多くの人の参加をお待ちしています!
(2018/1/19 川口泰司)