EVENT 「私たちの部落問題vol.2」トークセッション
第2部トークセッションでは、土肥いつきさんによるレクチャーを受けて、ABDARCメンバーとのトークセッションが行われました。カミングアウトする側の意識とは?土地の名前をリスト化することの問題点とは?仲間とは?そして、今後の展望は…。盛りだくさんの内容を全6回に分けてお送りします。
第6回目は「具体的な教育やアクションを!」です。
登壇者 土肥いつき …京都府立高校教員
阿久澤麻理子…大阪市立大学教員
上川多実 …BURAKU HERITAGEメンバー
川口泰司 …(一社)山口県人権啓発センター事務局長
第2回目の「部落の外に住む部落出身者が抱える困難」はこちらから
第3回目の「受け止めてくれるマジョリティの存在」はこちらから
第4回目の「一番言いたくないことは、一番わかって欲しいこと」はこちらから
第5回目の「(質疑応答)部落問題学習の現状は?」はこちらからご覧いただけます。
●具体的な教育やアクションを!
川口
最後にみなさん一言ずつお願いします
上川
私が今、一番、関心があるのは、今回の事件を受けて、部落を離れて生活している人たちがどういう思いをしているのかということです。私自身は「仲間がいたよ」と言われることがちょっとコンプレックスのように感じる時があって、自分はそれがなくて、なくて、なくて、すごく苦しんできたんですよ。そういう風に苦しんでいる人って今きっとたくさんいると思っていて、そういう人にどうアプローチできるのか、すごく考えてます。
ぜひ、つながって欲しいけど、私自身も以前はどうしたら同じ悩みを抱えている人たちと繋がれるのかわからなかったし、どうしたらいいんだろう…。でも、今はネットがあるので、そういうツールを使っていったりして、とにかく若い人たちも諦めないで、つながる努力を続けて欲しいなっていう風に思ってますし、ABDARCがそんな一つの場になれたらいいと思ってます。
(撮影:片岡遼平)
土肥
示現舎のMさんの事を考えているんです。あの人、ある意味、部落への愛があるような気がして仕方ないんですよね。そうでないと、あそこまで、がんばらないじゃないですか。ある意味、DV的な感じであるけど。当事者の人からすると「何、言ってんねん」と言われるかれもしれないが、なんで、そんなに部落にこだわるのかと思ってしまう。
私もトランスジェンダーの問題に取り組んでいますが、その中で、誰かがしんどい思いをすることは避けたいという思いがずっとあるんですよ。かつての自分は、部落や在日の子と関わりながら、心のどこかで「あんたはいいよな」という思いが、どこかにあったから。だからこそ、私の話を聞いた人にそんな思いをぜったいさせたくないという思いが、私が自分のことを語るときの原点ですね。
阿久澤
海外ではヘイトスピーチの報道などはたくさんされている訳ですが、海外の人に今回の事件や部落問題について伝えようとすると、封建時代の話からしないと、理解してもらえないわけですよ。なぜ「土地」の名前を書いたらいけないのかと言われる。すごく海外の人には部落問題は分かりにくいと言われるんです。それと全く同じ事を、今の若い学生たちが言います。学生と話していると海外の人と話しているくらいのギャップがある。それぐらい部落問題については世代間のギャップがあると感じています。
人権教育・啓発については、「思いやり」や「やさしさ」などではなくて、具体的に差別がどのように問題なのかということを明らかにして、どう闘っていくのかということを、しっかりと教えていかなければいけないと感じていて、そのことについて今は考えていきたいなと思っています。
川口
今日は「カミングアウト」と「アウティング」というテーマでイベントをしました。
「差別は見ようとしなければ、見えない、見抜く力がないと見えない」という事を感じている。東京にも部落差別で悩み、思い、苦しんでいる人もたくさんいます。そして活動している人もたくさんいます。それは、他の差別問題でも同じことです。果たして、自分は、その事をしっかりと見ようとしていたのかということを考えさせられました。
差別は「見抜く力がないと見えない」、そのために、しっかりと学習する必要があると思っています。
そして、具体的な差別に対して、具体的にどう闘うのかが大事だということ。「思いやり」や「やさしさ」などの道徳的な感情論ではなく、具体的な差別を前にしたときに、しっかりとどう「NO!」というアクションを起こすのか、それがすごく大事だと思っています。
みなさんで、具体的に行動を起こしていきましょう。それを呼びかけて、第2部のトークセッションを終わりたいと思います。ありがとうございました。
(構成 上川多実)