Q.部落差別解消推進法とはどんな法律?


A. 2016年12月、「部落差別解消推進法」という法律が制定されました。

 

 これまで、部落問題に対する対策としては、1969年に制定された「同和対策事業特別措置法」が存在し、以来一連の特別対策が行われ、2002年3月まで続いてきました。

 

 それ以降、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」(2000年)に基づき、部落問題に関する取組みが行われてきましたが、本件で争われているインターネット上での部落差別に対しては無策の状態が続いてきました。

 

 そのため、部落差別解消推進法第一条で、「現在もなお部落差別が存在するとともに、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じている」とされたことは非常に重要でした。加えて、相談体制の充実(第四条)、教育及び啓発(第五条)、実態に係る調査(第六条)について定められ、地方自治体における取組を促しています(第三条)。既に、2017年12月には、兵庫県たつの市で同趣旨の条例が制定されています。

具体的な予算措置や差別の規制、被害の救済の根拠となる法律ではありませんが、私たち一人一人が具体化していくべき拠り所になるものと言えるでしょう。

 (山本崇記)

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部落差別の解消の推進に関する法律

 

(目的)

第一条 この法律は、現在もなお部落差別が存在するとともに、情報化の進展に伴 って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ、全ての国民に基本的 人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり、部落差別は許されないもので あるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題であることに鑑み、部落差別 の解消に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、相談体制の充実等について定めることにより、部落差別の解消を推進し、もって部落差別のない社会を実現することを目的とする。

 

(基本理念)

第二条 部落差別の解消に関する施策は、全ての国民が等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、部落差別 を解消する必要性に対する国民一人一人の理解を深めるよう努めることにより、部 落差別のない社会を実現することを旨として、行われなければならない。

 

(国及び地方公共団体の責務)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、部落差別の解消に関する施策を講ずる とともに、地方公共団体が講ずる部落差別の解消に関する施策を推進するために必 要な情報の提供、指導及び助言を行う責務を有する。

2 地方公共団体は、前条の基本理念にのっとり、部落差別の解消に関し、国との 適切な役割分担を踏まえて、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする。

 

(相談体制の充実)

第四条 国は、部落差別に関する相談に的確に応ずるための体制の充実を図るものとする。

2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、その地域の実情に応じ、 部落差別に関する相談に的確に応ずるための体制の充実を図るよう努めるものとす る。

 

(教育及び啓発)

第五条 国は、部落差別を解消するため、必要な教育及び啓発を行うものとする。

2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、その地域の実情に応じ、 部落差別を解消するため、必要な教育及び啓発を行うよう努めるものとする。

 

(部落差別の実態に係る調査)

第六条 国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するため、地方公共団体の協力を得て、部落差別の実態に係る調査を行うものとする。

 

附 則 この法律は、公布の日から施行する。