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この社会には残念ながら未だ部落差別が存在することから、その差別をなくそうと学校教育や自治体、企業、市民など、さまざまな人たちが取り組みを続けてきています。被差別部落出身者にも当然ながら差別をなくそうと活動している人もいますが、部落差別が今もあるこの社会のなかで、自分の出身を隠したくないという思いを持ちながらも、差別を受けることを恐れ、躊躇し、言い出しにくいという人々も大勢います。そうさせている状況があるからです。
自分が被差別部落出身であることを告げるとき、多くの場合「この人なら受け止めてくれる」という人の存在が重要になります。これは部落問題に限りません。誰にも自身のコンプレックスやその他さまざまな悩み事、苦しいこと、悲しいこと、恥ずかしい、辛いと感じていることなど、誰彼かまわず言えるものではないというものごとがあるものではないでしょうか。
自分のなかで誰にも言えず抱えているもの、抱えさせられているものがあって、そのことを誰彼かまわず言えないのは、そのことを受け止めてくれるだろうかという不安を抱いたり、人が冷やかされたりバカにされている光景を見たり聞いたりしてきたことが躊躇を生んでいることが考えられます。
被差別部落出身者がカミングアウトを躊躇する時の心理というのは、「本当に受け止めてもらえるだろうか」「もしかしたら友だちや恋人が離れてしまうのではないか」「引かれるのではないか」「陰で何かを言われたらどうしよう」「差別されないだろうか」などの不安や躊躇を抱えているというように、社会のなかでたくさん存在するであろう、自分自身の本音や事実を打ち明けられない人たちと非常によく似たものです。
しかしそのことは、突き詰めてみると実は一番知ってほしいことであったりするのではないでしょうか。
信頼できる人との出会いやカミングアウトするまで要する時間などを、無関係に他人に暴かれることで奪うことはあってはならないことです。
カミングアウトされた人たちの皆が皆、受け止めてくれるとは限りません。しかし、先ほど述べたように、この人なら言えるという人にカミングアウトし、それを受け止めてもらえた時、「自分のことを言ってよかった。楽になった」と自己解放されたり、より深い関係性や安心できる居場所が生まれたりといったことも、これまでたくさんの人たちが経験しています。
そういった、被差別部落出身者や障がい者やその家族、外国にルーツをもつ人たち、LGBTの人たちなどの「不断の努力」の積み重ねによって、さまざまな人たちがカミングアウトしやすい社会を少しずつつくりあげてきているにも関わらず、鳥取ループは、そうしたことを一切無視し、この人は被差別部落出身者だという情報、被差別部落はどこにあるのかという情報をインターネット上で公開し続けています。
2015年8月、ある大学生の男性が、同性愛者だと同級生に暴露されたことをきっかけに大学内の建物から転落死した事件がありました。暴露することは、時に取り返しのつかない事態を招きます。カミングアウトするのに躊躇してしまう人たちがいるにも関わらず、何の人間関係もない他人に暴露される行為は許されません。鳥取ループは、それを平然と行ってきているのです。
(電脳燕会)