家族写真をめぐる私たちの歴史
在日朝鮮人、被差別部落、アイヌ、沖縄、外国人女性

              (ミリネ編 皇甫康子責任編集・御茶の水書房

 

 

部落を生きる人たちの語りに触れてみたい、という人に手に取ってほしい一冊です。

さまざまなルーツの女性たちが 家族写真を手がかりにして自分や家族の歴史を綴ったこの本には、部落にゆかりのある女性たちも文章を寄せています。

部落差別というものを前にして、祖父母、両親、恋人、そして自分自身がどんな葛藤を抱え、人生の中でどんな選択をしてきたのか・・・

十人十色の生き様が、女性たちの語りから浮かび上がってきます。

 

例えば、部落出身の男性と結婚した女性が、解放運動に出会い抵抗を覚えたときのこと。

例えば、部落の外で出自を隠して暮らす一家に生まれ育った女性が、部落問題と出会いなおすときのこと。

 

部落差別との向き合い方は決して家族の中でも一様ではなく、その違いが親と子の関係に不和を持ち込む例も出てきます。

家族の歴史におけるそうした 無数の選択の積み重なりの上に立って、今・ここにいる「私」が、どんな生き方を選ぶのか。

女性たちの語りからは、葛藤の「その先」を生きる力強い姿が見えてきます。

同時代の人たちが部落差別とどう向き合っているのかを知る上で、またとない一冊です。

 

他のルーツの女性たちの文章も併せて読むと、差別という問題の広がりと深さ、そして差別についての経験を人と共有し自分の言葉にしていく作業がいかに大事かということも読み取れると思います。

 

                          (つばめ花子)