部落問題と向き合う若者たち

                   (内田龍史編著・解放出版社)

 

 『部落問題と向き合う若者たち』は、部落の若者や、部落出身者と結婚した若者へのインタビュー集です。

 この本のよいところは、淡々としているところかもしれません。

 

 筆者による解説や解釈がなく、若者の語りがそのまま載せられているので、インタビューを読んでどう感じたかは、読み手に投げられます。筆者が「こう読め」「こんなふうに感じろ」という押し付けは一切ありません。

 

 しばしば、「自分のまわりには部落の人はいない」「知り合いにはいない」(でも、ほんとうにいないのかな、ということはさておいて)という言葉を聞きます。部落問題について関心がないわけじゃないけど、出身者の顔がみえないから、どうイメージしていいかわからない、という声も聞きます。まさに、そういう人に、読んでもらうとよいと思います。

 

 部落の若者は、ここにいるんだ、こんなこと考えてるんだ、部落の若者ってひとことでいうけどいろんな人がいるんだ、考えてみたらいろんな考えがあるのは当たり前だ、「部落の人」ってひとくくりにしてた、この人面白そうな人だなあ、そういうことが感じられるかもしれません。

 

 また、終章の「部落問題を語ることの困難とその可能性」は、現代の部落問題をめぐる論点が簡潔に整理されていて、「とりあえず、いまの部落問題ってどうなってんの?」ということを知りたい方にも、おすすめです。

                           (くろみつ)